※○○年と書いてあるのは、課題を開始した年です。これ以外にも、雑誌記事、映画字幕、小説の断章などを随時扱っています。 ●1996年
保安官ジェシーの、親友であり恩人である老人が殺された。ロサンゼルス市警につとめる捜査官ケイトは、その休暇中、事件の解決を急ぐ友人ジェシーの痛みによりそう。 『愛を、知るとき』で有名なフォレストの、レズビアン刑事ケイトシリーズの一本。中編。
アリソンは国際的なオーケストラのクラリネット奏者。ギリシャ演奏旅行中に出会った通訳のコンスタンティーナは、彼女のファンだった。翻訳の仕事を手伝って欲しいと頼まれたアリソンは、コンスタンティーナと過ごすうち、その健やかさに癒やされる。共に食事をとったり、二人でユードラ・ウェルティの小説に出てくる花で花束をこしらえたりしているうち、摂食障害も悩みの種だった家族の思い出も、いつしか苦しいものではなくなっていた。 純文学レズビアン作家、ジェイン・ルールの、繊細かつ心暖まる短編。
●1997年
65歳のアリスは、若いレズビアン4人に部屋を貸している。それは女性運動の後押しをしようというのでなく、一人暮らしの危険をさけるためと、経済上の理由からだけだった。若いレズビアン達は、ハリエットという恋人と三十年も一緒に暮らしたというアリスを先輩として扱い、なんとかして関わろうとするが、実際にアリスとハリエットの間にあったことは、若い彼女たちが想像しているようなことではなかった。 ジェイン・ルールの、いささかほろ苦い味わいの秀作。
私は文学に信頼をおいている。しかし、レズビアンが、女達がつくりあげる文学の実態はどのようなものか? 彼女たちの証言は、小説として磨き上げるべきなのか、それとも歴史上の生の声として保存すべきなのか? 女性雑誌にたずさわる人間は常に資金繰りと時間に追われ、勉強も、自分の仕事もまともにできないような有様だ。私たちは次世代のために種をまいた。私が信頼する文学の流れは、今後いったいどうなっていくのだろうか? レズビアン作家ドロシー・アリソンのエッセイ。女性作家の苦労の歴史など、貴重な一証言としても読める。
●1998年
生涯学習センターで、時間つぶしのために作文クラスを受講しはじめた老ユダヤ人男性。彼はかつて、ゲイの市長、ハーヴェイ・ミルクと友人だった。それを知った若いレズビアン講師は、手紙形式で、その思い出をもっと綴るよう促す。 若い女性講師と老人の心の交流を、平易な言葉で描いたニューマンの短編。老人のリベラルな視点と歴史的証言も興味深い。
●1999年
ゲイ男性とストレートの女性は、実は同盟関係になれる組みあわせだ。昔ならいざしらず、今は両者が手を組むメリットが沢山ある。実際に豊かな友情をはぐくむ例も沢山みてきた……。 ゲイ作家、エドマンド・ホワイトのエッセイの一つ。柿沼瑛子訳『燃える図書館』所収。
南部生まれの私は、都会の上品な食べ物では飽きたらない。考えるのは、脂っぽい、甘い、身体に悪い食べ物のことばかり。食事の趣味のあわない女性とは、恋も長くは続かない。私のレズビアンとしての活動も、様々な思い出も、常に食とともにあった。 『くそったれボーン』『秘密の儀式』で有名な、ドロシー・アリソンの短編。
●2000年
ポールはピッツバーグの高校では異端児だった。単なる不良や見栄っ張りというのではない、派手な格好はするが、素行不良なのでもない。彼は劇場でアルバイトをし、役者を友とし、ひたすら美しいものを見たり聞いたりしてそれに浸るのが好きだった。しかし悪めだちが過ぎてついに放校となり、父につまらない仕事につかされ劇場の出入りまで禁じられた彼は、公金横領を企て、ニューヨークへ高飛びする。しかし彼を待っていたのは、描いていた想像よりもさらにおぞましい結末だった。そして、彼の選んだ行動は……。 二十世紀初頭の中西部アメリカを主に描いた純文学作家、ウィラ・キャザーの初期を代表する短編。レズビアン作家が書いたゲイ小説の古典としても、高く評価されている。窒息しそうな半都会暮らしの中で萌えだすゲイ青年の苦悩が、巧みに描かれている。
●2001年
ルースは人の欠点を見抜き適所に配置するのが得意で、大手デパートの人事部長としては非常に優秀な女性だった。にも関わらず、自分の家にいれるハウスキーパーはとんでもない人間ばかり。なぜならデパートの面接に受からない人間ばかり雇うからだ。一番新しく雇ったアンナもまた、先日落とした女性だった。家を出るための資金が欲しいと言っていたアンナだが、いざ雇ってみると、そのとんでもない怠けぶりは、ルースの想像を越えていた。それでもルースはアンナを解雇しない。有能で多くを知る彼女にも、どうにも説明できないことがあるのだった。 母、そして人の妻である二人の間に流れる微妙な心理を描いた、ジェイン・ルールの短編。
●2002年
「ポスト・トランスセクシュアル宣言」の副題のついた、サンディ・ストーンのTS論文。2005年夏、ついに出版! TS論文集『セックス・チェンジズ』(作品社)に収録されています。
●2003年
舞台装置家になりたい19歳のテレーズ。年末の書き入れ時、デパートで臨時のアルバイトをしていた彼女は、謎めいた年上の人妻、キャロルと出会う。テレーズは精一杯の勇気をふりしぼり、キャロルにクリスマスカードを送った。そして二人はつきあい始めるが……。 サスペンスの巨匠、パトリシア・ハイスミスの初期長編ラブロマンス。
●2007年
東海岸の自由な大学に通うヒロインは、四つしか年の違わない文学科の教授と恋に落ちる。その二人の恋を、月が見守っていた。 随所にはさまれた詩が美しい、ヒロインの成長を描く掌編。
ハイスミスの波瀾万丈の生涯を、詳細な調査を元に描いた伝記。 「Carol」の背景に迫ります。
●2008年
ヒロインの母はインテリで、家庭の主婦におさまりきれず、ついに自殺してしまった。彼女の夫は優しい紳士だったが、経済力と包容力に欠けており、カナダでの移民生活は、植民地時代の豊かな生活にくらべて、ひどく耐え難いものだったのだ。 ヒロインの現在の恋人も、イギリス生活が長く、似たような複雑な背景を抱えている。 ヒロイン自身も、過去のパートナーの間に息子がおり、現在の恋人と三人暮らしという複雑さだ。 恋人の過去と母との思い出が重ねられて語られるうち、女性同士の絆、女性の生き方の歴史が立体的に浮かび上がる。 カナダの詩人・劇作家、ダフネ・マーラットの中編小説。
●2009年
カナダの人気作家、アイヴァン・カヨーテによる、連作短編集。 アイヴァンは三十代のレズビアン作家だが、ぱっと見、少年にしか見えない。家族、親戚、友人、お隣さん、読者との関わり合いを通して、ユーモラスに、時にしんみりと、クイアであることを描き出しています。
●2012年
カナダの人気作家、アイヴァン・カヨーテによる、連作短編集。【Loose End】の続きです。
●2014年
スダリスの自伝的短編集。奇妙な物語のオンパレード。
●2015年
サラ・ウォーターズの最新作を、先取りして読みました。『黄昏の彼女たち』として2016年に翻訳が出ています。
●2016年
BBCでもドラマ化された、サラ・ウォーターズの最初の長編を読んでいきます。
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